松本雅弘牧師
2019年6月30日
認定こども園 高座みどり幼稚園 創立70周年記念礼拝
マルコによる福音書10章13~16節
今日は、お忙しい中、認定こども園高座みどり幼稚園の創立70周年記念礼拝にご出席くださり、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。
5年前、私ども高座みどり幼稚園は、創立65周年を迎え、その記念事業として、認定こども園という新しい形態の働きに移行することを決断し、新しい園舎に建て替えて、その働きを進めてきました。
あれから5年の月日を過ごし、今日、多くのお客様と共に、ここに、70周年記念礼拝の時を迎えることができました。ほんとうに感謝です!
今日皆様にお配りしたプログラムにも、私ども高座みどり幼稚園の「ミッションステートメント」が印刷されています。次のような文章です。
「高座みどり幼稚園は、キリスト教の人間観に基づき、子どもたちの全人的な成長を祈り求め、総合的な幼児教育を展開するコミュニティー幼稚園をめざします。」
近年、私たちの社会は大きく変わってきました。先週だけでも、子どもに関わる悲しい事件や話題が幾つもありました。ここ大和市も例外ではないでしょう。そうした中で、私どもに与えられている、このミッションを果たし、地域の子どもたちやご家庭に仕えていくには、今後、どのようにしていったらよいだろうか、ということを真剣に考え、祈り求めてまいりました。
実は、キリスト教会には、「ニーバーの祈り」と呼ばれている、たいへん有名な祈りがございま す。
「変わることのないものを守る力と/変わるべきものを変える勇気と/この二つのものを識別する知恵をお与え下さい」
刻一刻と変化するこの時代にあって、この祈りの言葉、神様への願い、それは、まさに私たちの思いをよく表現したものであると思います。少なくとも、私にとってはそうでした。
そして、この祈りを祈る中で、私たちに与えられた神さまからの御答が、0歳からのお子さんも、
そして長時間の保育を必要とする子どもさんも、責任をもってお預かりしながら、地域のご家庭に仕えていくことでした。
このことが、今、この大和市のご家庭にとって、とても必要とされていることなのではないだろうかという思いに導かれていきました。
そして今、振り返って考えます時に、本当に不思議な形で新園舎建設が行われ、認定こども園としてスタートし、この5年の間、今日、このお祝いの礼拝に駆けつけて来てくださった来賓の皆さま方には、それぞれの御立場から数多くのご支援を賜ったことを、この場をお借りして、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
今日お読みしました。聖書に出て来るイエスさまの言葉、これは高座みどり幼稚園が、大和市最初の幼稚園としてスタートした時から、今日に至るまで、子どもたちに接していく時に、いつも心に留めるようにと導かれている、聖書の言葉です。
「子どもたちをわたしのところに来させなさい」(14節) 一言で言えば、「幼子をキリストに」ということです。
先ほど読んでいただきました聖書の箇所をもう一度見ていただきたいと思います。
「イエスに触れていただくために、人々は子どもたちを連れて来た。弟子たちはこの人々を叱った。しかし、イエスはこれを見て憤り、弟子たちに言われた。『子どもたちをわたしのところに来させなさい。妨げてはならない。神の国はこのような者たちのものである。』」
ある時、大人に連れられてやってきた。子どもたちが、イエスさまを見つけると、イエスさまめがけて走っていきました。子どもは、自分のことを大事に思ってくれる人を知っていますから、そのお方を見つけるやいなや、走って行きたかったのでしょう。
ところが、そこに居合わせた主イエスの弟子たちが、子どもを邪魔者扱いしたのです。具体的に
は主イエス目がけて走っていく子どもたちを制
したのです。
その場面でイエスさまが語られた言葉が、この「子どもたちをわたしのところに来させなさい」という言葉でした。
そのお言葉に励まされて、親たちが、子どもを連れて行くと、主イエスは、子どもたち一人ひとりを「抱き上げ、手を置いて祝福された」のです。
子どもたちへの、このイエスさまの関わりが、彼らの心の深くにあるニーズを満たしたのです。
子どもたちは、自分が愛されていることを実感しました。
この場面を想像してみたいのです。走って来る子どもたちを、イエスさまは一人ひとり抱き上げ、手を置いて祝福しておられます。
どのくらいの人数の子どもたちがいたかは分かりません。でも一人ひとり、抱き上げられ、手を置いて、祝福の祈りをしていただきました。
そうされた子どもの顔に、笑顔がこぼれたことでしょう。順番を待つ子どもたちも期待で胸が膨らんでいたのではないでしょうか。
そうした子どもたちの表情や姿、喜びの声を聞きながら、当然、親たちも嬉しかったに違いない。周囲の大人たちも安心したことでしょう。
子どもたちが満足する姿を見て、お母さん、お父さんは幸せになります。お母さんやお父さんの心の中にある安心した心を、子どもたちは敏感にキャッチし、そして自分たちも安心する。嬉しくなるのです。
この認定こども園高座みどり幼稚園の働きが、こうした愛を発信し、愛の連鎖をご家庭や地域に広げて行きたいと、私たちは願っています。
園や教会の中で、よくお話することがあります。それは、ここでイエスさまが示してくださった3つの行為は、子どもたちが成長していく上での大切な心の糧となるもの、大切な「子育ての基本」を教えていることだと思います。
その3つとは、抱き上げること、手を置くこと、そして祝福することです。
「抱き上げる」、これはスキンシップです。そのままで受けとめる行為です。駄々をこねる子どもも、お母さんにギュッと抱きしめてもらうと、不思議と落ち着くものです。
「手を置く」とは、キリスト教の伝統では「祈る」ことです。
子どもとの関わりの中で出来ることがあります。でも私たちの力の範囲を超えた、どうしてよいかわからないような出来事に遭遇することもあるでしょう。そのような時、私たちは神に祈り、この子を慈しみ深い神さまの御手に委ねる。それが祈るということです。
そして3つ目、「祝福する」。分かり易く言えば、褒めるということです。相手をそのままの姿で尊重し、認めるということです。
そして、この3つの動作・行為を通して、いったい子どもたちに何が伝わるかと言えば、それは「あなたは大切な人です」という愛のメッセージが伝わっていくのです。
これは子どもに限らず、私たち大人にとっても、日々、生きていく上で本当に必要としているものではないでしょうか。
聖書に戻りますが、この日、子どもたちは、そうしたイエスさまと接することで、自分が尊い存在であることを実感する経験をしたのです。
そしてこれこそ、高座みどり幼稚園が70年間にわたって大事にして来た、そしてこれからも大切にしていく保育の基本なのです。
これからも、神さまと、そして、今日共に礼拝を捧げている私たちが祈りと力を合わせ、「幼子をキリストへ」という尊い働きを担わせていただきたいと覆います。
そして、キリストへと導かれた子どもたち一人ひとりが、主イエスに抱かれ、祈られ、祝福されることで、「あなたは大切な人です」。「本当に自分は大切な存在なのだ。そして同じようにお友だちも、お家の人たちも、みんな大切な一人ひとりなんだ」。そう肌で味わい、その恵みを周囲に広げる人の輪を、高座みどり幼稚園から発信してゆきたいと願います。
お祈りいたします。