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主日共同の礼拝説教

“へりくだる”という生き方を選び取る

金山達成神学生
ペトロの手紙一 5章5-6節
2021年4月18日

Ⅰ. はじめに

今年度、研修神学生としてお世話になります、聖契神学校から参りました金山達成と申します。主にジュニアチャーチとユースに関わらせていただいております。限られた期間ではありますが、皆様と一緒に、主の礼拝に与り、神の家族としてのお交わりができることを、本当に楽しみにしています。1年間どうぞよろしくお願い致します。

Ⅱ. 「へりくだる」とは?

今回注目したいのは、ペトロの手紙一のみことばです。ここでは、「神の力強い御手の下でへりくだりなさい」ということが書かれています。
私が印象に残っているエピソードを1つ紹介します。私は今、キリスト教主義の中高一貫校で理科の先生をしているのですが、今から2年前、ある女子生徒と「へりくだること」や「謙遜」について話す機会がありました。その時、生徒が興味深いことを言ったのです。「先生、私は『へりくだる』と聞くと、ただ雑用をこなすようなイメージがありました。でも、そうじゃない気がしてきました。だって、うちはキリスト教主義の学校だけれど、校長先生や副校長先生みたいな立場の先生たちは、みんな模範的で、素敵なクリスチャンだから。だとしたら、『へりくだる』って何なのでしょうか…?」それを聞いて、なかなか鋭い視点だな、と思いました。
「へりくだる」とは、何でしょうか?そして、ペトロの手紙一でペトロはなぜへりくだることを勧めているのでしょうか。

Ⅲ.へりくだるとは、互いに尊敬し合うこと

1つ目のポイントは、「へりくだるとは、互いに尊敬し合うことである」ということです。ペトロはこの手紙全体を通して、立場の差に関係なく、互いに尊敬し合うことを勧めているのです。なぜ、互いに尊敬し合うことが大事なのか。それは、教会に属する一人一人が互いに愛し合い、一致し、世界に対してイエス様の愛を表していくためです。
当時は、ペトロの手紙一の宛先である小アジアの教会には、迫害の危機が迫りつつありました。信徒たちの間には、かなりの緊張感が漂っていたと想像できます。先が見えない、一体これからどうしたらいいのか。何だか、今のコロナ禍に置かれている私たちの状況とも近いものがあるかもしれません。そんな中ペトロは、まず互いの違いを認め合い、受け入れ合い、一致して、この困難な現状を乗り越えることが大事だ、と語っています。私たちが一つ所に集まって同じ神様を見上げるためには、互いに尊敬し合う、という姿勢が大事であると思います。

Ⅳ.へりくだりは、神を見上げることから生じる

2つ目のポイントは、「へりくだりは、神を見上げることから生じる」ということです。先ほど、へりくだるとは、互いに尊敬し合うことだ、とお話ししました。しかし、人間的な視点と努力で相手を尊敬することは簡単ではありません。隣人を尊敬するためには、まず自分自身と神様の関係を見つめ直し、私は神様に造られた存在であるということ、私たちはみんな、神様からそれぞれに異なるユニークな個性を与えられた作品である、ということを思い出す必要があります。
また、神様は、天から私たちを見下ろして「もっとへりくだらないとダメじゃないか」と一方的に言われる方ではありません。イエス様を通して、最もへりくだった姿を私たちに教えてくださいました。私たちクリスチャンは、このイエス様に従っていきたい、と考えている者たちですよね。であれば、なおさら、私たちは神様が言われるように、またイエス様がなされたように、へりくだることを実践していくべきです。誰かと自分を比べるのではなく、まず神様を見上げることが、自分のアイデンティティの確認、そしてへりくだりにつながります。

Ⅴ.へりくだりは、人生の方向を変える

3つ目のポイントは、「へりくだりは、人生の方向を変える」ということです。先ほど、へりくだりは、神様を見上げることから生じる、とお話ししました。私たちが真剣に神様と向き合う時、まずは悔い改めに導かれるのではないかな、と思います。聖書が語る「悔い改め」は、人生の指針をより神様と聖書とに合わせていく、よりイエス様に近づいていく、という前向きで肯定的なニュアンスが強いです。6節には、神様が、適切なタイミングで適切な状況へ導いてくださることが書かれています。そのためには、神様に自分の存在を委ねて、今神様から与えられているものに感謝して生きるという、へりくだりが必要です。「へりくだること」はただの手段ではありません。私たちが、クリスチャン、イエス様に倣い従おうとする者である以上、生涯続けるべき生き方です。
神様を正しく認識し、悔い改めへと導かれる時、考え方が変わっていくのではないでしょうか。
そしてその時、隣人との違いを受け入れ合えるようになったり、互いを認め合えるようになったり、愛をもって一致していけるようになる。考え方の変化の積み重ねが、人生の方向転換につながります。これは、よりイエス様に似た存在へと変えられるプロセス、と表現することもできるでしょう。

Ⅵ.おわりに

今日は、「へりくだること」について、3つのポイントを見てきました。そのような、“へりくだる”という生き方を選び取っていく時に、私たちの人生は日々、方向転換をしていきます。そして、最善の時に、最善の方法で、最善の場所へと、神様が導いてくださると信じます。今は特に、コロナ禍という難しく大変な状況に私たちは置かれています。このような状況を打開するための秘訣も、私たち一人一人のへりくだり、またそこから生まれる一致にあると思います。私たちが、より、神様の前にへりくだった歩みをするために、今できることは何でしょうか。これからも、神様に聞き求め従っていきたいと思います。
お祈りします。